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新・木偏百樹

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木の名

はんのき

別名
高さ15m~20m、胸高直径1mくらいになる。日本全土、朝鮮、中国東北部、シベリヤの温帯に分布する。池の畔、河原などの湿地、地下水位の高いところ に生える先駆的樹木。
根粒菌のはたらきで、空中の窒素を固定し、肥料の役割をする。他の植物の生長にも役立つ。そのためか自身も成長が早く、やなぎなどの倍の成長量だ。
名前はハリキリから転じたもの。はりは田畑を開く意味の墾(はる)の名詞化したもので、墾の木(はりのき)の意味であった。田圃の近くに植え、地下水位の指標にしたり、稲への肥料になることで、この木がそのような名前がついたのだろう。
宮沢賢治もハンノキが好きで、作品の中に歌いこんでいる。私はこの木からは物悲しさを感じる。田山花袋は「田舎教師」に頻繁に並木道として、「フランダ ースの犬」では主人公ネロの住居近くの運河の岸にハンノキを描写している。共に主人公が志半ばで亡くなってしまうストーリーの背景としてハンノキを描 いているからだろう。
コシヒカリで有名な新潟県長岡市での田植えの写真を見たことがあるが、ここで道に続いているはんのきの稲架(はさ・はざ)木がでていた。田んぼのあぜに植えられていて、下から2メートルくらい枝打ちされている。2- 3メータ間隔で植えられていて、横木を渡し、刈り取った稲を掛けて天日で乾燥させる。間隔や立ち木の大きさは地区によって異なるが、昔はこのような景色 が日本全国で見られた。また、薪として火力が強いので好まれ、樹高を3メートルぐらいに留め、それ以上に伸びた枝を毎年切って燃料にしていた。合理的 で環境と調和した生活にかかわっていた木ということになる。
センター試験(平成11年・国語)にも出た、「森の心、森の知恵(林進学陽書房)に「家に男の子を授かると、田んぼにハンノキを植える。子供が大きくなっ て刈り入れの仕事をするとハンノキの木陰で休み、刈り取った稲はハンノキにかけて干し、そして死んだ時は、ハンノキで火葬してもらう」という内容のことが 記されているが、この木の特徴を言い表しているし、事実だったのだろう。
英名のアルダーは日本でもよく使う名だが、古いラテン語で水をあらわす言葉で、なにかと水にまつわる事が多い。ヨーロッパでは ハンノキのことを「妖精の木」と呼んでいて、その木を切る事を禁止しているところもある。これは日本の感覚とは異なり、当時ではこの木の生育する場所は 湿地帯で、暗い、もや がかかった土地は不気味であり、恐ろしい場所であった。したがって事故も多い、このような場所に行かせないための事ではなかったからと思う。
用材としても日本でもヨーロッパでも護岸関係の工事に利用されていた、水面下で非常に耐久性があるからである。ヨーロッパでは杭や水道管や、水飲み 場の桶、船材に利用されていた。ベニスの街の半分はこの木杭で支えられている。
材は伐採した時など、空気に触れると橙-赤味を帯びてくる。そのためヨーロッパでは、木を切り倒したら木が血を流すという言い伝えがある。
現在でははんのきの生育に適する湿地の多くが消失してきて、自生のはんのきは年々少なくなってきていることさ大変気がかりのことである。
学名
Alnus japonica
かばのき科
ハンノキ属
落葉高木
落葉高木
雌雄異株
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落葉高木
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英名
Japanese Alder

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