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新・木偏百樹

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木の名

なつめ

別名
原産は中国北部などといわれるがはっきりしない。わが国には中国から古い時代に渡来し、はじめは薬用として栽培され、全国に広がったのは江戸時代と 言われている。
また、数少ない童謡に謡われている木でもある。「あのこはだあれ」という童謡には、「あのこはだあれ だれでしょね なんなんナツメの花の下 」とあるので、昔から、日本人には親しまれていたのであろう。万葉集には二首詠われている。
ナツメの名前の由来は、初夏に新芽を出すから「夏芽」だというという説と夏に実がなるや「夏の梅」などがある。
実ははじめは緑淡緑だが9月下旬頃から、熟し暗紅色となる。長さ2~3cmの熟した果実はそのまま食べることもできるし、砂糖漬にしたり、蜂蜜で煮て干し て食べる。食用の実は種類も多く、インターネットのサイトで購入することが出来る。棗の実には滋養強壮の効果がある。糖分、カロリーも高く、蛋白質、脂 肪、ビタミンも含んでいる。特にビタミンCの量は果物の中で最も多く、天然のビタミン剤とも言われている。また、漢方でよく使われる生薬のひとつで、筋力 増強、肝臓を保護する作用があり、花粉症、のどの痛み、カゼの予防や増血、咳止め効果、胃や尿の働きをよくする。動脈を広げ、心筋収縮力を強める効 果もある。胃痙攣などの鎮痛に、神経の興奮をしずめる鎮静作用、小児の夜泣きにも少量を用いる。薬用酒は不眠症にも効果がある。他の薬物の作用を 穏かにするために他の生薬と配合することも多い。現代の研究では癌細胞を抑えることができるといい、治療に用いられていると聞く。
材は淡黄褐色から深紅褐色。硬く、重く緻密で加工しやすいいので印材などに使われる。私は棗のペーパーナイフを会社で、ミニフォークを自宅で愛用して いる。木版印刷の版木にもなるが、棗本とはその書物をさす。また禍棗災梨(かそうさいり)という諺がある。無用の本を刊行することの無駄を言ったもので、棗や梨の木は版木の材料となるが、つまらない、書物を次々に出版されて は、「なつめ」や「なし」の木にとっては、とんだ災いということ。
『新釈平家物語』(集英社)を刊行した随筆家・松本章男さんの「ナツメの実」というエッセイを読んだことがある。氏のナツメの実の観察と戦後の食料事情がよくない時に 、学校で友人と棗の実を食べて遊んだ事が書かれてあり、私の父が子供のころ同様に近所の子供と食べて遊んだと聞いた事を思い、同世代は同じ経験を していると思った。
父の運転手役で一緒に行動している途中で食事タイムになると決まって堺にある美々卯につれていかれた。父はそばが好物で、よく出入りしていた。当時私 は麺類が嫌いで閉口した。しかし五十を過ぎてからそばは大好物になった。なつめはこの店の玄関に植えられていて下草のそばの花とよく合っていた。
棗の文字は朿が二つ合わせたもののように見えるが、そうではない。「刺す」と「?(とげ)」の文字の左の部分を組み合わせた文字だという。「刺す」に草冠をつけると「?(とげ)」という文字になる。棗はトゲがあり、うっかり触ると刺さる、そこでトゲと刺さるを組み合わせたのである。
学名
Zizyphus jujuba
クロウメモドキ科
ナツメ属
落葉高木
雌雄異株
 
英名
Common Jujube,Chinese Jujube

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